みなさんこんにちは!音大受験アカデミー講師の阿部奏子です♪
この記事では、東京藝術大学音楽学部楽理科の入試について、入試科目や対策方法などを徹底解説します!
① 入試科目
楽理科の入試は【前期日程】のみですが、共通テストから3月上旬までと長いスパンで試験があります。それぞれの試験に合わせて、勉強のペース配分にも気を配っていきたいところですね。
共通テスト
【時期】1月中旬
【科目】国語(現代文・古文・漢文すべて)、英語(リーディング・リスニング)およびそれに準ずる外国語、他1科目(自由選択)
学力検査(藝大独自)
【時期】2月末頃
【科目】
・国語(現代文・古文) ※募集要項には「現代の国語・言語文化・古典探究」と記載
・英語(コミュニケーション英語Ⅰ~Ⅲ)/ドイツ語/フランス語の3ヶ国語から1科目を選択
実技試験など
【時期】3月上旬
【科目】
・小論文(口述試問を含む)
・和声
・楽典
・聴音書き取り
・新曲視唱
・リズム課題
・副科実技
② 入試の特徴
藝大の中では準備すべき科目が多い楽理科。国語と外国語の筆記試験もあるので、普通科高校出身の合格者がかなり多く、学力を活かせるという側面もあります。
楽理科の入試では、共通テストの点数のみでの足切りはありません。大学に提出する共通テストの成績は、2月末に行われる学力検査の点数と合わせて、1次審査と最終判断に用いられます。ですので、仮に共通テストで思うようにいかなかったとしても、記述式テストの実力に自信があれば、十分挽回できる可能性はあると言えるでしょう。
学力検査の結果、出願者の約3分の2前後(※年によって変動あり)が実技試験等に進むことができます。最終的な合否に直結する実技試験等の勉強に時間を割く必要があるのはもちろんですが、学力検査に不安が残らないよう準備をすることも大切になってきますね。
③ 入試科目の詳細と、対策方法
1. 共通テスト
国語と英語(またはそれに準ずる外国語)が必須で、もうひとつの科目は自由に選択できます。一般的には、日本史や世界史など社会科科目を選択する人が多いと言われていますが、数学や科学を選択する人も少なくない印象です。入学してから一番役に立ちそうなのは世界史かもしれないと私は思っているので、まだ迷っている方は世界史を選択してみるのも良いかもしれません!
英語は、「リーディング(100点満点)とリスニング(100点満点)の合計点数を、160点:40点に換算したものを『英語』の評価とする」とありますので、どちらかといえばリーディングの能力が重視されることになります。入学してからも、授業で英語の論文を読むことがあるので、おそらくそのためでしょう。
共通テストは、「8割取れれば安心」と言われています。合格者の話を聞く限り、必ずしも全科目8割とはいかなくても十分合格できそうですが、8割を超える得意科目が一つはあると心強いですね。
学力検査
基本的にすべて記述式で、国語は現代文と古文です。
現代文では、漢字問題から読解、自分の意見を述べる問題まで幅広く出題されます。論説的文章を読み解く力は入学してからも必要になってくるので、理解しづらい曖昧な文章に出会ったとしても、自分なりに解釈し、それを理由とともに文章で伝える力が問われていると思っておくと、取り組みやすいかもしれません。古文は共通テストよりもややレベルが高い問題が出されている気がしますが、現代語訳や要旨説明の問題は自分なりに最後まで考え、書き切るようにしましょう。余裕がある人は、古文単語帳のコラムや古典便覧に目を通しておくと知識が増えるので、ぜひ試してみてください!
英語は大きく2つの長文読解がメインで、和訳や要約を中心に出題されます。指示語の内容もしっかり伝わるよう、自然な日本語で回答するのが理想です。最後に和文英訳もあるので、その対策もしておくと点数アップにつながります!英語の対策には、「英語長文問題精講」(中原道喜 著)がおすすめです。イギリス英語特有の言い回しや、やや硬めの書き言葉にも慣れておくといいことがあるかもしれません。
国語・英語ともに過去問演習がメインになってくると思いますが、近年は著作権の関係で、赤本ですらも本文が読めない問題が増えてきています。学校や塾の先生に相談して、類似した出題傾向の他校の問題を紹介してもらうのが良いでしょう。
小論文(口述試問)
楽理科入試の中で最も重要度が高いと言われている小論文ですが、楽理科の小論文は課題文がなく、短文での問題に直接回答するものが例年出題されています。さらに、音楽を中心とした芸術に関するお題に答える必要があるので、音楽・芸術に対する幅広い考えを養っていく必要があります。楽理科をはじめとする、音楽学専攻の合格経験がある講師のもとで学ぶのがいちばんの近道だと思っています。
問題文の言葉を自分なりに定義づけ、それから考えを述べていく必要が出てくることもあるので、少し特殊な鍛え方が必要になってきます。ですがこの特殊さも、難しいばかりではありません。もともとの文章力が大事に見えてしまいそうな小論文ですが、誰もがコツを身につける必要があるゆえに、スタート時点での差はあまりないと言えます。努力次第でいくらでも伸びるので、早めに対策を始めると鬼に金棒ですね。
ちなみに、入試時点での音楽学に関する知識はそこまで重要ではありません。今まで音楽に触れながら生きてきた経験を通して考えたことや感じたことで十分なので、それらを論理的に組み立てる能力が何よりも大事になってきます。
口述試問では、自分が書いた小論文について先生たちから質問をされ、答えていくことになります。書いてから少し日数をあけて口述試問の日になるので、自分が書いたことを忘れないようにする必要がありますね。
受験生の立場からするといちばん緊張して先生たちが怖く見えてしまう口述試問ですが、先生たちも怖がらせようとはみじんも思っておらず、むしろ好意的に話しかけてくれるので、あまり身構えずにのびのびと自分の考えを説明しましょう(私自身、入学後に「実はとても優しく質問しているつもりだった」と先生からネタばらしされた……という経験があります笑)。
和声
和声が課されるのも、楽理科の大きな特徴です。少し専門的な内容になりますが、基本的には三和音で回答できる範囲のバス課題とソプラノ課題が出題されます。難しく見えますが、規則に従って和音を組み立てていくものなので、然るべき勉強をすれば誰でも解けるようになります!
最低1年は勉強して慣れたいところですが、日々の努力によっては半年ほどでも合格できた人もいます!最初のうちはまとまった勉強時間の確保が大変かもしれませんが、毎日とはいかなくとも、コンスタントに解いていけると良いですね。
範囲は、藝高・藝大で使用している「新しい和声」(林 達也 著)から指定されるので、この本を教科書にすると良いでしょう。ただし初めて和声を学ぶときは、旧「藝大和声」「島岡和声」とも呼ばれる「和声 理論と実習 Ⅰ」から始め、徐々に「新しい和声」を併用するのがおすすめです。
楽典
広く使われている黄色い楽典、「楽典 理論と実習」で基礎を学び、過去問演習を行うことで大体の範囲はカバーできます。ですが、黄色い楽典では説明が少ない「非和声音」や「終止形」、「音律」に関しては追加で詳しく勉強しておくと満点に近づくことができそうです。 「非和声音」や種類豊富な音楽用語などについて学ぶには、「楽典 音楽の基礎から和声へ」(小鍛冶 邦隆 ほか)を参考書として使うのもおすすめです。本の内容自体は、半年もあればマスターできると思います。基礎を踏まえつつ、受験が近くなったら過去問を解く時間を週一くらい確保できると良い練習になるでしょう。
聴音書き取り
単旋律聴音、複旋律(2声)聴音、四声帯(和声)聴音の3種類が出題されます。2026年度入試からは単旋律が記憶聴音に切り替わるとの予告が出ていますが、基礎は変わらないので、過去問演習を含め、日々の積み重ねが大事です!
新曲視唱・リズム課題
新曲視唱・リズム課題では、予見の時間にできるだけ多くの情報を読み取ることが大事です。先生に時間を測ってもらいながら、緊張感を持って歌うのに慣れておくと良いでしょう。
聴音やソルフェージュは、始めるのに早すぎるということはありません。どこに進学するにせよ、音楽関係であればほぼ必ず必要になるので、音大や音楽系のコースに進む可能性があるなら早めに始めておくとよい科目です。ただ、楽理科受験では完璧を求められるわけではないので、始めるのが遅くても十分戦えます!私は高校に上がってからきちんと習いましたが、受験の時には得意科目になっていました。習熟度に合わせて、頻度も先生と相談しながら進めていくと良いと思います。
副科実技
ピアノだけでなく、かなり様々な楽器で受験できます!
「楽器が合否に響くことはほぼない」と言われてはいますが、最低限、止まらずに弾き切ることを目標に練習していきましょう。
【補足】
和声以下の科目は、非公開ではあるものの基準点が設けられており、そこに達していなければ足切りにあってしまうというシステムのようです。どれも完璧が求められているわけではありませんが、できるだけ加点ポイントになるよう、能力を高めておくと怖いものなしですね♪
どれくらいできていれば良いのか不安に思うことも多いと思いますので、入試経験者を頼って目安を教えてもらうと良いかもしれません!
藝大楽理科は「前期日程」としつつも試験期間が長いので、併願校を検討している場合は日程に注意が必要です。同じ科目で戦える大学や、共通テスト利用可の大学なども検討しつつ、無理なく受験対策をしていきましょう!
④ 音楽学が学べる他の大学・専攻
愛知県立芸大 音楽学コース
楽理科と併願する人もかなり多いコースです!どの専攻も学習環境が良いと話題の愛知県芸。校風などと合わせて検討してみるのも良いと思います。
お茶の水大学 音楽表現コース
文系の教育学部に入っています。推薦があることも含め、とても人気のあるコースです。
武蔵野音大 音楽総合学科 音楽学コース
整った設備でも高い魅力を誇る武蔵野音大の音楽学コース。試験を受けられる日程がいくつかあるのも、受験生に嬉しいところですね。
桐朋学園大学音楽学部 ミュージコロジー専攻
音楽学専攻をベースにして2025年度より新設される学科です!英語での授業など、新たな取り組みが盛り込まれています。
その他にも、教育学部や文学部をはじめとする学部のコースとして定められているところは数多くあるので、自分に合った受験方法・校風の学校を探してみてくださいね!
《番外編》東京藝大附属高校楽理専攻について
なんと令和7年度から、藝高に楽理専攻が設けられることになりました。藝高の受験を検討中の方も、ぜひご相談ください♫
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*楽理科入試の「小論文+口述試問」はとても重要な科目ですので、基本的にはリアルタイムに話し合いながら進められる「各種個人レッスン」(zoomなどを使用したビデオ会議形式)での受講をお勧めしております。
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記事執筆:阿部奏子 (監修:矢野葵)