東京藝大「楽理科」とは何を学ぶところなのか?向いている人や学校生活について解説

1. はじめに

こんにちは♪音大受験アカデミー講師の阿部奏子です。
今回は、東京藝大の「楽理科」について、どんなことを学ぶことができるのか、解説していきます。

楽理科の概要

楽理科は、東京藝術大学音楽学部にある学科のひとつで、定員は23人(2025年現在)。

やや少なめに感じますが、藝大音楽学部の各学科の定員数を見てみると、ひとつの学科としてはそこまで少なくもない位置づけです。男女比は年によってばらつきがありますが、どんなジェンダーでも等しく勉強しやすい環境にあります。

現在では「楽理」という名称は藝大でしか使われておらず、他の大学では「音楽理論」「音楽学」などが近い専攻と言えますが、カラーは学校によって千差万別。その点では全国で唯一の学科であると考えて良いでしょう。

今回は、そんな楽理科ではどのようなことを学ぶのかについて見ていきます!

2. 「楽理」ってどういう意味?入学したら何を学ぶの?

「楽理科って何をしているの?」という質問は、楽理科在籍者が必ず聞かれる質問でもあります(学内関係者からも!)。

先ほども書いた通り、「音楽理論」という言葉に楽理の2文字が含まれていますが、両者は必ずしも同じ意味というわけではありません。

一般的に「音楽理論」と呼ばれるものよりも広い視野をもって、音楽そのものやそれに関連するあらゆるものに対して考えを深めていくことであるとは言えそうですが、それ以上の「何を学ぶところか」という問いに関しては、学んだ人の数だけ答えがあります。

執筆者個人の考えですが、楽理科で色んなことを学んだ上で、改めてこの問いに自分なりの答えを出せるようにすることこそが、楽理科で学ぶ4年間の最終目標になるのかもしれません。

では参考までに、藝大楽理科の公式サイトから一部抜粋して公式見解を見てみましょう。

“楽理科は、音楽とそれに関連する様々な事柄について、学問的に考察する場所です。もちろんここでいう「音楽」は、日本や西洋の古典音楽だけでなく、 古代から現代までに、世界中で創造・演奏されたあらゆる種類の音楽を含みます。(中略)楽理科では、「音楽の実践に根差した学問的研究」を目指しています”(楽理科公式HP 「学科紹介」より http://musicology.geidai.ac.jp/wp/about/gakurika/)

興味がある方は、ぜひ公式サイトから全文を読んでみてくださいね!

ここに書かれている通り、古今東西どんなものでも、音楽に関することを研究できるのが楽理科ですが、これだけだと少しわかりづらいと思うので、いくつか具体的な例を挙げてみようと思います。

例えば、

・モーツァルトが大好きで、彼の人生と作品についてより深く調べてみたい

・東南アジアの楽器に興味があって楽器の構造や演奏、歴史について勉強したい

・音楽教育の歴史や方法について研究し、今後の日本の音楽教育に貢献したい

・哲学者、プラトンの音楽についての考えを学び、それに対して自分の考えを組み立てたい

・数学/科学を使って音楽を解き明かすにはどのような手法があるのか調べたり、自分なりのメソッドを構築したりしたい

・K-popが好きで、踊りと音楽の関係や日本で流行っている理由やきっかけを調べたい

・音楽を聴いて美しいと感じる理由が知りたい

・大好きなゲームに使われているBGMの効果や曲自体の特徴について考えたい

・短調の曲は暗く、長調は明るいというイメージがある理由が知りたい

などなど……。挙げればきりがないのでこれくらいにしますが(すでに多いですけれど)、これでもほんの一部です。具体的な例を出したものについては、ぜひみなさんが好きなもの/人/ジャンルに置き換えて考えてくださいね。

もちろん、ここにあるのとは全然違う内容でも、言い方は良くないかもしれませんが「何でもあり」です(音楽に関わってさえいれば)。

さて、このような研究テーマは、突き詰めていくと、「音楽学」と呼ばれる学問に行き着くことが多くあります。楽理科の先生方もそのほとんどが「日本音楽学会」のメンバーで、さらに日本以外の規模の音楽学会に所属されている場合もあります。

3.「音楽学」とは何か?

辞書を引くと、ただ音楽に関する学問としか書かれていない場合や、音楽を「あらゆる側面から」研究する学問と書かれていることなどがあります。

これでは実態がよくわからないですが、先ほど楽理科で何について学ぶかのところにも書いた通り、かなり多岐にわたる研究が行われているので、このように書くほかないのかもしれませんね。

音楽のみならず、色々な学問分野を横断することもあり、広がりのある学問だと言えます。

もっと知りたい場合は、「日本音楽学会」の機関誌『音楽学』にさっと目を通すのも良いかもしれません。載っている論文のタイトルを読むだけでも呪文のように感じますが、難しい専門用語は見なかったことにして、ざっくり捉えてみると雰囲気が掴めるかもしれません。

さて、少し前に述べたように「何でもあり」な世界ではありますが、ひとつ確かなことは、「学問的に」考察するという点です。ただ音楽を楽しむだけではなく、論理的・分析的な視点をもって音楽に向き合うことが大切になります。

感覚を理論づけたり、出来事の因果関係を見つけたり、あるものの特徴やほかのものとの共通点/相違点を探したりと、はっきりした根拠をもった上で、何かものを言う、あるいはすでにある誰かの考えを支持する。そういったことができるようになるために、楽理科では色々なことを学びます。

4. カリキュラムについて

楽理科の主な授業は上野キャンパスで開かれています。

まず最初は楽理科が開講している授業についてです。 1〜2年生では基本的に、「概説」と呼ばれる授業を中心に履修します。「西洋音楽史」「日本音楽史」「東洋音楽史」「音楽民族学」「音楽美学」「音楽理論」について概説の授業があり、それぞれ専門の先生から、全員が等しく基礎を学びます。

これらは、音楽学のさまざまな分野をざっくりカテゴライズしたもので、その後自分の研究をしていく上で土台になる考え方を身につけることができます。

それぞれのカテゴリーには、よりステップアップした内容や担当の先生の専門分野を学ぶ「講義」や「演習」が存在し、概説を学んだら、その中から興味がある授業をいくつか自由に選んで履修します(概説と並行して学ぶことも可)。

音楽にまつわる外国語の文献に慣れるための授業もあります。英語に関しては必修ですが、そのほか、さまざまな言語を選んで履修することができます。

これ以外にも、作曲家とその作品に即して検討する授業など、年によって異なるさまざまな授業があります。シラバスを読んで気になる授業を選びましょう。

3年生のうちから、卒業論文に向けた準備が始まります。自分の研究に関する先生との面談、上級生の論文の中間発表への参加、国内外から招かれた研究者による講義などが含まれる「実習」が必修科目となります。

そのほか、作曲法の基礎になる概念や、音楽学部生が広く必修科目として履修するソルフェージュ、副科としての楽器、幅広い語学、リベラルアーツなどが学ぶべき科目として定められています。

また、移動が必要にはなりますが、北千住など他のキャンパスで開講している授業も受けることができるのも魅力ですね。

5. 教職などの資格は取れる?

藝大には教職(中学校・高校の音楽)と、学芸員資格の授業が設けられており、楽理科の学生はどちらも履修することができます。これらを履修することで、免許を得ることができるようになっていて、どちらかを選ぶ人も少なくありません。

教育実習などの期間には、他の授業は公欠になるので、必要な単位の取得にもあまり影響なく資格を取ることができます。

もちろん資格系は履修せず、そのぶん好きな授業や研究に関わる授業のボリュームを増やす選択をする人も。自分のやりたいことに合わせて決めるのが良いでしょう。

6. 演奏はするの?

カリキュラムのところでも少し触れたように、副科実技として何か楽器演奏の授業を受けることが必要になります。初級から設けている授業もあるので、初めて触れる楽器でも心配なく取り組むことができます。新しい楽器を初めてみるのも、音大生活の楽しみのうちのひとつですよね。

また、参加必須ではありませんが、毎年冬に「楽理科研究演奏会」という演奏会があり、多くの学生が出演すると同時に、ボリュームのあるプログラムノートが配られます。出演するのに選抜が必要な年もあるくらい、学生たちに愛されているイベントです。

運営も基本的に学生が行っているので、演奏会企画や裏方仕事も経験できる、良い機会になっています。

7. どんな人が楽理科に向いている?

執筆者個人の意見ですが、自分の好きなことや疑問に思ったことを一歩踏み込んで調べたり、好きな理由を知りたいと思ったりする人は楽理科に向いていると言えるでしょう。

知識を深めたり考えたりすることが好きで、音楽に興味があれば、どんな人にも広く門戸が開かれている学科です。

楽理科で幅広い知識を身につけ、深く考える力を鍛えた上でそれを演奏に活かす人もいます。将来演奏家として生きていきたい人にとっても、楽理科に入るという選択肢は有効な手段になるかもしれません。

その意味では、楽理科という環境は、音楽に関わることならやりたいことが何でもできる土壌が整っている場所だと言えるでしょう。

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