——入試の仕組みから学費・奨学金、準備スケジュールまで徹底解説——
1. はじめに
音大受験を考えはじめたあなたへ
「音楽の道に進みたい。」「今よりもっと本格的に音楽を学びたい。」
そう思い始めたとき、多くの人が最初にぶつかるのが、そもそも音大受験って、何をどう準備すればいいの?という疑問です。
音楽大学の入試は、一般的な大学受験と違い、
・専攻実技
・副科実技
・楽典などの音楽系筆記
・聴音・視唱などのソルフェージュ系
・国語・英語などの学科試験
・面接・志望理由書・小論文など
といった、複数の要素を総合的に評価する仕組みになっています。
大学ごとに入試方式・試験科目・重視されるポイントが異なり、志望校に合わせた対策が必要ですし、併願校の選び方についても、第一志望と傾向を合わせるなど、戦略を立てることが必要不可欠です。
さらに、学費や奨学金、卒業後の進路のことなど、考えることが多いですよね。
通常、準備する科目数も一般大学を受験する時より多いので、考えるだけでその量に圧倒されてしまうといったケースも少なくありません。
このガイドでは、そのような悩みを抱えながら音大受験を目指す受験生・保護者の方や、
音大を受験しようか悩んでいる方に向けて、
・音大とはどのような場所なのか
・入試の種類と試験科目
・大学・専攻の選び方
・学費や奨学金の具体例
・いつから準備を始める?
・高1〜3の準備スケジュール
・準備を始めるのが遅くなったら
・受験生と保護者に伝えたいポイント
などについて、できる限り丁寧にお伝えします。
少しでも、今後の道筋を整理するお役に立てれば嬉しいです!
2. 音楽大学とはどんなところか
「音楽を軸に生きていきたい人」のための場所
音楽大学は、音楽を専門的に学ぶための高等教育機関です。
コースや履修の選択にもよりますが、単に演奏技術を磨くだけではなく、音楽史や音楽理論、アンサンブル、教育法、録音・音響、音楽ビジネスなど、音楽を取り巻く幅広い分野を体系立てて学ぶことができます。
教員免許取得に向けた授業や、近年では著作権関係の授業もありますし、
語学も豊富に学べるところが非常に多いです。
卒業後の進路は、次のように多岐にわたります。
・演奏家(ソリスト、オーケストラ、吹奏楽、室内楽、伴奏など)
・作曲家、編曲家、サウンドクリエイター
・中学校/高校の音楽教員、特別支援学校教員(教員免許が授業で取れることも多い!)
・音楽教室講師、リトミック講師
・音楽療法士
・レコーディングエンジニア、PAエンジニア
・コンサート/舞台制作、マネジメント、宣伝
・楽団などの事務
・楽器メーカー、楽譜出版社、音楽関係のIT企業やメディア 等
一般企業に就職する人もいますが、割合としてはなんらかの形で生涯音楽に関わっていく人が多いと言えるでしょう。
「好き」だけでは続かないが、「好き」がないと続かない
音大での4年間は、想像している以上に音楽漬けの日々になります。
・個人レッスン
・アンサンブル、オーケストラ、合唱などの授業
・ソルフェージュ(聴音・視唱)、和声や対位法、音楽史
・定期試験、レポート、コンサート本番
など、時間も体力も使う生活です。
その一方で、「音楽が本当に好き」「もっと知りたい・上手くなりたい」という気持ちがあれば、これほど充実した環境もありません。体力や適応力も、いろいろなことをこなすうちに身についてくる面もあります。
私は楽理科所属なので実技専攻とは少し毛色が違いますが、声楽科のレッスン伴奏などに携行した影響で、譜読み力や伴奏能力は以前より格段に上がったように感じます。
周りは音高卒だらけ???人員構成の不安あれこれ
音楽高校出身の人ばかりなの?など、人員構成が気になる方も多いと思います。
確かに高校も音楽科だった人は見かけますが、意外と普通科の高校出身の人も多いですよ(学科や年によって多少割合の差はあります)。
私の周りでは、出身校の違い関係なしに実力を認め合い、良い関係性を築いている人たちがほとんどなので、その辺の問題はあまり気にしなくていいと思います。
ただし入学後、特にソルフェージュなどでは、音高卒生の能力が際立つことが多いので、圧倒される人も少なくないようです。
高校生のうちから、大学でやるような内容を授業で学んでいるので当然といえば当然ですが、やはり全体的にみてよくできる人が多いように感じます。
もちろん合格に必要なものを極めるのが最優先ですが、もし「差をつけられたくない!」「大学に入ってから少しでも楽をしたい!」という希望があれば、ソルフェージュの先生に聞いてみてください。条件がそろえば、発展的なことを教えてもらえるかも。
また、ジェンダー比もほどほどで、これも学年や専攻によって多少の変動はあるものの、
極度に偏りすぎということはないように思います。
3. 音大入試の種類と全体像
音大入試には、いくつかの方式があります。大学・専攻によって名称や仕組みは多少異なりますが、大きく分けると以下の通りです。
科目の詳細は、学校や学科によってあるもの/ないものが変わるので、しっかりリサーチをして臨みましょう。
一般選抜
もっともオーソドックスな入試方式です。
・専攻実技
・楽典、聴音ソルフェージュ
・共通テスト
・国語・英語といった学科試験(主に国公立や総合大学)
・面接(場合により)
などを組み合わせて合否が決まります。
一般入試では専攻実技の配点が最も大きく、その実力次第では他の科目での順位がすべて覆されてしまうほど。
言うまでもなく、専攻実技の対策に一番力を入れていきたいところですが、他の科目にも足切りが設定されていたり、同じくらいの実力の人と競り合った時の判断材料になったりもするため、実技以外も手を抜かないようにしましょう。
また、私立音大を中心に、
・秋入試
・冬入試
・一般選抜(2〜3月)
と、複数の入試機会が設定されていることも多くあります。
日程の組み方によっては、複数大学を受験することも可能ですし、入試の形式に慣れることもできるので、うまく活用すれば有利にはたらくでしょう。
総合型選抜(旧AO入試)
・専攻実技
・志望理由書・自己推薦書
・面接
・小論文や課題レポート
・国語・英語といった学科試験(主に国公立や総合大学)
・聴音ソルフェージュ
などを通して、人物像や将来性も含めて評価する入試方式です。
多くの場合、実施時期が早く(夏〜秋)、早くから準備した受験生が受けやすい入試ともいえます。
科目を見ると一般選抜とあまり変わらないようにも見えますが、ソルフェージュなどは難易度がやや低くなっていたり、問題数が少なくなっていたりすることもあり、やや比重が軽い場合も多いです。
こちらも実技が大事なことは言うまでもありませんが、志望理由書などがある学校がほとんどで、熱意や志の高さを評価してもらえるという点でも大きなメリットがあります。
志望理由書や小論文は、家で一定の期間をかけて作成することができる場合がほとんどで、
しっかり時間をかけて作り上げるのが得意な人に向いています。
学校推薦型選抜
高校からの推薦を受けて受験する方式です。
出欠席や成績など、一定の基準を満たす必要があります。
総合型選抜と似たような科目設定のことが多いですが、それに加えて「調査書」という要素が重要なものになってきます。
その他の入試形態
その他、学校によっては海外に関わりのある方に向けた特別入試などを行っている場合もあります。
詳細はそれぞれの学校のホームページに詳しく書かれているので、過去の募集要項やサイトの情報をあたってみると、有益な情報が得られるかもしれません。
4. 試験科目の詳しい内容と対策の仕方
ここまで読んでくださった方には繰り返しになってしまいますが、音大入試の科目は、大きく以下の4つに分けられます。
・専攻実技
・音楽系基礎科目(楽典・聴音ソルフェージュ・副科ピアノなど)
・学科試験(国語・英語・小論文など)
・面接・志望理由書
それぞれについて、内容と対策のポイントを詳しく見ていきましょう!
専攻実技
専攻実技は、音大入試の中心となる科目です。
専攻によって内容はさまざまですが、共通して見られるのは次のような点です。
みなさんにとっては当たり前かもしれませんが、改めて簡単に確認してみたいと思います。
・技術的な完成度(正確さ・テンポ・音程・リズム・コントロール)
・曲の解釈や表現力
・ステージマナー、集中力
試験では、バッハなどのバロック、モーツァルトやベートーヴェンなど古典派、ロマン派、近現代など、時代の違う作品を複数曲指定されることも多く、受験生には「スタイルの弾き分け」が求められます。
実技については、指導してくださる先生とよく相談することが大切です。
今の自分の実力で「本番までに一番完成度を上げられそうな曲」を、背伸びしすぎずに選びましょう。
難曲に挑戦するよりも、「自分の良さが出る曲」を丁寧に仕上げる方が結果につながりやすいと言われています。
さらに、人前で弾く・歌う機会を増やすことで、場慣れするというのも重要な準備になってきます。
音楽系基礎科目
楽典
楽典は、楽譜を読んで正しく理解したり、自分で書いたりするために必要な知識をつける科目です。
・調、音階
・音部記号
・音程
・和音
・拍子・リズム
・移調
・繰り返しなどの記号
・強弱・速度記号、発想標語
などが出題範囲に含まれます。
学校によっては、
・教会旋法
・終止形、非和声音、調性判定
・リズム書き換え
・基礎的な音楽史
などが出題されることもあり、通常の楽典プラスアルファの対策が必要になることもあります。
それぞれの学校の問題の特色を確認し、志望校に合わせて、発展的な内容も扱える先生を選んで師事するのがおすすめです。
直前期は実技に集中するためにも、早めに完成させておくのが良い科目でもあります。
聴音ソルフェージュ
まず代表的なのは流れてくる音楽を聴いて、譜面に書き取る「聴音」の試験です。
・単旋律聴音(メロディ1声)
・複旋律聴音(メロディ2声が基本)
・和声聴音(ソプラノ、アルト、テノール、バスの四声。四声体と呼ばれることも)
などがあります。
東京藝大では、単旋律聴音の試験が「記憶聴音」になったことが話題になっていますが、
このように暗記をさせたり、段階が細かく分かれていたりと、学校によって少しずつ異なる問題の形式をとっています。
ただ、基本は上記の3つに分類できるので、どこの音大を受ける場合でも、共通の基礎対策が必要になってきます。
独学で合格レベルまで到達できる人も稀にいますし、ネットや本などに教材が増えつつある現在ですが、多くの受験生にとって、独学に十分な材料はまだ揃い切っていません。
何より、人によって苦手なポイントも合っている復習方法も違うので、先生をうまく活用しながら自分に合ったトレーニング方法をカスタマイズしてもらうのがおすすめ。
特に、少しでも苦手かもというポイントがある場合は、先生にアドバイスをもらいながら進めることで、どつぼに嵌ってしまうことを防げます。
初めて見る楽譜を、その場で歌う「初見/新曲視唱」も大事な科目です。
ピアノ伴奏は無いことが多く、最初に与えられる主和音をたよりに自力で正確な音程を導き出す力が求められます。
・正しい音程で歌えるか
・拍子を感じながら歌い、リズムを正確に刻めるか
・適切なテンポ設定で歌えるか
・調性感をしっかり感じて歌えるか
・強弱の変化やアーティキュレーションが指示通りつけられているか
・発想標語の読み取りとその表現ができているか
などが評価内容です。
音程の正確さはもちろん、リズム読みの訓練も必要。
習慣的に「初見課題」に触れることこそが、実力向上の近道です。
これらに加え、東京藝大など一部の大学では「リズム課題」が課されることもあります。
これは、新曲視唱と同じように、初めて見る楽譜を対象に、そのリズムだけを音程をつけずに読むものです。音名で読む場合、シラブル(タタタなど)で読む場合があります。
また、ピアノ科や作曲科などをはじめとする一部の専攻では、「初見/新曲視奏」が課されることもあり、早いうちからの対策が必要です。
必要があれば専門の先生を探したり、実技の先生に紹介してもらったりすると、要点を押さえて演奏するコツが身につくと思います。
副科ピアノ
専攻がピアノ以外の場合、多くの大学で「副科ピアノ」が課されます。
・スケール(音階)
・練習曲
・バッハのインヴェンション
・古典派のソナチネやソナタ
・近現代の小品
などから出題されることが多いです。
高度なレベルは求められませんが、「基本的なピアノ技術」が身についているかを見られます。
これは、日本の西洋音楽教育が比較的ピアノを中心にして進んできたという歴史的背景や、勉強を進めていく中で何かとピアノの知識も必要になってくることが多いから、という事情に基づいていると考えられます。
特に教員免許の取得を目指す人にとっては、ピアノは今後必要になってくるので、早めに始めておくと良いでしょう。
「両手で弾くのが苦ではない」くらいのレベルになっておけると、楽典など他の科目の勉強にも活かせるので怖いものなしです。
また、聴音はたいていピアノの音で演奏されたものを聴き取るので、ピアノの音に慣れておくという意味でも副科ピアノが役立ちます。
学科試験(国語・英語など)
東京藝術大学をはじめとする国公立の音楽系学部では、学科試験が重視されやすい傾向にあります。
共通テストや個別試験で、一定以上の学力が求められるため、音楽だけに偏らず、日頃からの学習習慣を作っておくことが必要です。
私立音大でも、国語や英語の試験を課す大学がありますが、難易度はばらつきがあります。
大学によっては、実技重視で学科は必要最適限の基礎レベルだったり、実技と学科の合計点で評価されたりするなど、扱いが異なることも多いです。
個別学科試験の科目は、ほとんどの大学で国語と英語の2科目のみです。
国公立であれば、共通テストでさらにもう1科目求められることも多いでしょう(国語、英語、自由選択の3科目を指定されるのが一般的)。
実技の先生や先輩に相談しながら、負担を減らして最短距離で合格に近づける、「音大受験カスタム」型の戦略を立てるのが得策といえます。
小論文
特に教育・音楽文化系の学科では、小論文が出題されることがあります。
音楽学/音楽理論系の専攻では、専攻実技と同等の扱いを受けることも少なくありません。
・「音楽の社会的役割について」
・「あなたにとって音楽とは何か」
・「子どもの音楽教育の重要性について」
・「音楽における〇〇とは」
など、音楽と社会・人間との関わりを問うものや、音楽の要素や意義を論理的に問うものが多いです。
基本的な小論文の構成力・文章力・論理力を身につけつつも、
・専門性のある内容に対応できる知識
・具体例として書けるような経験の引き出し
を増やしておくことなど、日頃の生活をフル活用するような、視野の広い対策が求められます。
一部には、口述試問が課されたり、面接で書いた内容に触れられたりすることもあり、ただ書くだけでなく、その内容を掘り下げて考え、話し合いに適応させていく力もつければ怖いものなしです。
面接・志望理由書
・なぜ音大に進学したいのか
・なぜこの大学・この専攻を選んだのか
・将来、どのような進路を考えているか
・どの先生に師事したいか
・これまでの音楽経験(コンクール・部活動・合唱・吹奏楽など)
などがスタンダードな質問内容として挙げられます。
特別なことを言う必要はないので、「なぜ音楽なのか」を自分自身の言葉で語れることが大事です。
面接では表情・姿勢・言葉遣いなど、社会性や熱意なども見られています。
質問者の目をしっかり見て、明朗快活に受け答えをするようにしましょう。
また、大学側は校風や理念に合った学生を期待しているので、アドミッションポリシーなどには目を通しておけると良いと思います。
その内容をそのまま述べることはしなくて良いですが、自分の回答ができるだけ大学の理想に合ったものになっているか、ポリシーに反したものになっていないかなどを意識するだけで、ぐっと合格に近づきます。
面接も志望理由書も、ある程度のテクニックはありますが、最後は「入学したい!」と言う意志の強さと真剣さがものを言います。
強い気持ちと、入学後を想像したワクワク感を忘れずに、好印象を勝ち取りましょう!
面接専門の先生が所属している塾なども増えてきているので、それらを活用するのも手です。
「プレゼンテーション」「表現」などの自己PRが課される大学・専攻もあります。
自由度があるぶん、何から手をつけていいのかわからないことも多いと思います。これらの科目は専門の先生について習うのが理想的な勉強法です。
先生たちは経験者であることも多いので、第一志望に合格しやすい自己PRプランを、みなさん一人ひとりの個性を活かしながら、一緒に考えてくれるでしょう。
5. 音大の種類と専攻の選び方
音大のタイプ
詳細は大学ごとに異なりますが、大きく分けると、次のような違いがあります。
① 国公立の音楽大学(例:東京藝術大学など)
・学費が比較的安い
・定員が少なく、倍率が高め
・学科試験の比重が大きい
② 私立の音楽大学(例:国立音楽大学・武蔵野音楽大学・東京音楽大学など)
・カリキュラムや専攻が幅広い
・学費は高めだが、特待生や奨学金制度が充実している大学も多い
・練習室、図書館などの設備が充実している
③ 総合大学の音楽系学部(教育学部の中にあることも多い)
・一般教養科目がより充実
・音楽教育や音楽文化、教員養成などに強いケースも多い
④ 短期大学・専門学校系
・実技や就職サポートに力を入れているところもある
・編入制度などが用意されている場合もある
専攻の選び方
最初から志望が固まっている方ももちろんいらっしゃると思いますが、今これを読んでくださっている人の中にも、色々なことに興味があってまだ悩み中という方もいるでしょう。
あるものを目指しているうちに、本当にやりたいのは実は違うことだった、というような気づきを得ることもあると思いますし、専攻の確定は、当たり前なようで意外と難しい側面があります。
専攻を決めるのにあたって、
・何を一番学びたいか(演奏・作曲・教育・録音・音楽ビジネス etc.)
・自分の得意分野はどこか
・将来どのような形で音楽と関わりたいか
などをじっくり考え合わせる必要があると言えるでしょう。
私自身、最初に音大を目指し始めた時とは専攻が変わっていますし、その背景には、自分の本当の興味を掘り下げた結果や、高校での学びをより活かせる道を模索したこと、入試科目の中で自分の強みを活かせる部分が見えてきたことなど、複合的な要因があります。
まずは自分が何に興味を持っているのか、しっかりと問い直してみることが大事です。
「人前で演奏するのが好き」なら器楽・声楽専攻、「曲を作る・編曲するのが楽しい」場合は作曲・音楽クリエーション系などは、比較的決まりやすい専攻かもしれません。
また、演奏が入り口だったとしても、実際は、技術を磨いて披露することよりもコンサートの企画や運営に興味がある場合など、アートマネジメント・音楽ビジネス系に向いている可能性などが見えてくることもあります。
企画だけでなく、音響などの技術面でコンサートに関わる道もありますし、曲の成立背景や心理作用などの理論的な内容に興味があれば、音楽学系への適性が高い場合も。
進路を考えているうちに、実は自分でもまだ見えていなかった興味や適性が見えてくるというのも、結構あるあるなパターンです。
専攻を固め切ってしまう前に、色々な専攻のカリキュラムを見てみたり、説明会などに足を運んでみたりすると良いでしょう。
先生など、客観的にみてくれる第三者に相談してアドバイスをもらうのも有効です!
実際に私も、当時ついていた実技の先生にアドバイスをいただきながら、たくさん悩んで受験先を決めました。
興味のある学科が先生自身の専攻とは違っても、他の学科の雰囲気を知っていることも多く、向いていそうかなどを聞いてみると、良い意見がもらえることもあるかもしれません。
6. 音大の学費とお金の話
音大進学を考える上で、多くのご家庭にとって大きな関心事になるのが「学費」です。
ここでは、国公立と私立の例を挙げながら、概要を整理してみましょう。
学生の皆さんは、ぜひ保護者の方と一緒にこのページを読んでみてくださいね。
国公立音大の学費イメージ
例:東京藝術大学 音楽学部(2026年度予定)
・初年度納入金:約981,360円(入学金 : 338,400円+授業料 : 642,960円)
・4年間で約260万円程度
国立大学は、文部科学省の「標準額」に準じた授業料であることが多く、私立音大と比べるとかなり抑えられた学費で通うことができます。
4年間の授業料だけで見れば、総額で約250〜270万円前後に収まる水準が一般的です(別途、教材費などは必要)。
私立音大の学費イメージ
私立音大は大学によって差がありますが、初年度納入金が200万円前後となるケースが多く見られます。
例1:国立音楽大学 音楽学部(2025年度)
・初年度納付金:2,317,000円(入学金:250,000円+授業料:1,250,000円+設備維持費等)
・毎年200万円程度の納入が必要
大学公式サイトでは、入学金・授業履修費・施設設備費・維持運営費などの内訳が公開されています。
例2:武蔵野音楽大学 音楽学部(2025年度・演奏学科)
・初年度納付金:2,220,000円(入学金:150,000円+授業料:1,390,000円+施設費、後援会費)
・毎年200万円程度の納入が必要
このように、私立音大では初年度だけで200万円を超えるケースが一般的です。
学費以外にかかるお金
学費のほかに、次のような費用がかかります。
・レッスン代(高校〜受験期までの個人レッスン、稀に入学後のレッスン費がかかる場合も)
・楽器本体、弦、マウスピース、リードなどの消耗品
・楽譜・スコア購入費
・コンクールや講習会への参加費、交通費
・一人暮らしをする場合の食費、家賃、光熱費
・防音室や練習室レンタル代
・宣材写真の撮影費
特に都市部の一人暮らしでは、年間100万円以上の生活費がかかるケースもあります。
そのため、「学費+生活費」の両面から資金計画を考える必要があります。
奨学金・特待生・教育ローン
学費負担を軽減する方法として、いくつかの制度があります。
大学独自の特待生制度
多くの私立音大は、
・入試の成績(特に専攻実技)が優秀な学生
・入学後も成績が上位の学生
を対象に、授業料全額免除・半額免除・一部免除といった特待生制度を設けています。
そのほかにも、給付型(返済不要)や貸与型(返済義務あり)の奨学金が、前年度の学業成績やコンクールなどの活動実績に応じて設けられていることもあり、上手に活用すれば負担をかなり減らすことができそうです。
日本学生支援機構(JASSO)の奨学金
全国の大学・短期大学・専門学校で利用されている、公的な奨学金制度です。
・第一種奨学金(無利子)
・第二種奨学金(利息付き)
の貸与型が一般的で、どこの大学に通う場合でも広く活用できる奨学金制度といえます。
世帯収入、学力基準などによって利用可否・貸与額が変わります。
JASSOでは給付型(返済不要)の奨学金も拡充されてきており、音大生でも利用している人は多くいます。
給付型の場合は、同時に大学が入学金・授業料の免除や納付猶予などを設けている場合も多く、生活費等のみの出費で大学生活を送ることができるのも大きな魅力です。
ただし条件は貸与よりも厳しく、収入/資産額、成績などを基準に毎年審査があります。
近年では、多子世帯への給付制度や入学料の免除制度なども整ってきており、リサーチ力がものを言う時代になってきていると言えるでしょう。
デジタルに強い世代の学生の皆さんも、日常的にアンテナを張って、心置きなく送り出してもらえるように心がけていくとよいと思います。
とはいえ、金銭的な面は、やはり子どもという立場ではピンとこないもの確かです。
こういった問題は保護者の皆さま主導で、調査や手続きを行っていただければ心強いです。
実技などの先生が学生時代に活用していたこともあったりするので、ぜひ関係各所に相談しながら、お子さんが不安なく目指せる環境づくりを模索してみてください。
民間財団による奨学金の例
音楽分野には、民間の財団による奨学金も多く存在します。
例:ローム ミュージック ファンデーションなど
・年齢や専攻分野に制限が少なく、多くの音楽家志望者が応募できる
・奨学金支給だけでなく、セミナーや交流、演奏の機会など、音楽活動全般をサポートする取り組みもある
ロームの奨学金には上記のような利点があり、多くの学生が応募しています。
また、入学後の話にはなりますが、海外留学を目指す音大生にとっても、強い味方となる制度です。
留学のためには、さらに多くの財団や公的機関からも奨学金制度があるので、選べる幅も広がります。
野村財団の奨学金や、文部科学省のトビタテ!JAPANなどを活用すれば、通常は莫大な費用がかかる留学の手助けになるでしょう。
私の周りにも、これらのシステムを利用して留学に行った人が何人もいます!
ほかにも、少し倍率は上がりますが、音大に限らず学生への支援を行っているキーエンスなどの奨学金を利用するのも良いと思います。
他の分野の人がライバルに多いのは確かですが、音楽系があまりいなければ、その分通るチャンスも多いかもしれません。
教育ローン
日本政策金融公庫の「教育一般貸付」や、各銀行系の教育ローンなどを利用して、学費や生活費の一部をまかなうケースもあります。
ローンは返済義務があるため、卒業後の見通しや返済計画も含めて慎重に検討することが大切です。
この辺は貸与型の奨学金とも似ていますね。
これらの返済義務があるものに関しては、長期的なことにはなりますが、将来返し続けていけるだけの熱意があるか、稼ぎを得る見通しは立つか(そのための現実的なプラン)などの現実問題にもしっかり向き合っていかないといけません。
苦しい面もあるとは思いますが、「どうしても目指すなら道はある」ということは、頭に入れておくといつか力になるかもしれません。
7. いつから何を始める?ステップ式準備スケジュール例
音大受験に向けて、いつから何をスタートするのが良いのか。
学年別に、おおまかなイメージを示してみます。
中学生〜高1の段階
・専攻の基礎技術をしっかり固める
→コンクールや発表会に参加し、人前で演奏する経験をしてみる
・楽典の基礎(調・音程・拍子・和音の考え方など)
→始める余裕があるなら、音楽之友社の黄色い楽典の本を一周読んでおくとよい
・簡単な聴音・視唱に触れておく
→基礎固め、習慣化しておくことが大事
この段階で、「本当に音楽を専門にやっていきたいか」を考え始める人も多いです。
高2の段階
・実技のレッスンを増やし、実力を伸ばす
・志望校候補をいくつか挙げる
・オープンキャンパスや受験講習会に参加する
・各大学の入試要項をチェックし、試験科目やレベル感を知る
・聴音、視唱、楽典の対策を本格的に始める
・過去の募集要項から課題曲などをみてみる
このあたりから、音大受験のための具体的な勉強に本腰を入れる必要が出てきます。
聴音ソルフェージュ等も、専門の先生について勉強するなら、この時期には始めておくのが理想です。
高3の段階
・志望校を最終決定
→時期や科目のことを考え合わせ、併願も一緒に考えておく
・課題曲を確定し、本番を見据えて練習する
→夏頃には募集要項が出揃う学校も多く、秋には詳細が知らされます。
課題曲は例年似たパターンになることも多いので、早めに目処をつけておくのも良いでしょう。課題曲というものの、いくつか準備していって当日その中から指定されたものを弾くというシステムも少なくありません。何が当たっても万全の状態で演奏できるように、余裕も身につけておくのが理想です。
・過去問演習(楽典・聴音・視唱・学科)
・面接や志望理由書の準備(必要な場合)
・練習量と休養のバランスに気を配りながら、コンディションを整える
・出願等書類の手配
→締め切りに注意!余裕をもって!郵送の場合は必着か消印有効かなども確認。
特に高3の夏以降は、新しいことを増やすのではなく、今ある力を安定させ、本番が最高潮になるように整えるのが重要になってきます。
冬場は体調を崩しやすくもなるので、しっかりと栄養をとって、健康第一にした上で準備をしましょう。
8. よくある不安とQ&A(受験生・保護者向け)
Q1. 「音大に行っても食べていけない」と聞き、不安です。
たしかに、ソリストとして大成功し、その活動だけで生計を立てている人はほんの一握りです。
しかし、音楽を仕事にする道はたくさんあります。
・学校教員、音楽教室講師
・アンサンブル奏者、楽団員、伴奏者
・音楽療法、福祉の分野
・録音、音響、舞台制作
・企画、マネジメント
・出版、メディア関係
など、音楽に関連する仕事は数多く存在します。
体力は必要になりますが、これらを演奏活動と並行している人も多くいるので、演奏も続けつつ収入の安定を図る手段として、非常に賢い策だと言えるでしょう。
「音楽で生きる=大舞台でソロを弾くこと」と狭く考えず、音楽とどう関わって生きていきたいかを広い視野で考えてみると、選択の幅が広がります。
Q2. 子どもの「本気度」がわからないのですが……
中高生の段階で、「一生をかけて音楽をやる」と言い切れる人は多くありません。
大切なのは、
・練習に自分から向き合えているか
・基本的に楽しそうに取り組んでいるか
・つらい時期でも、完全には投げ出さずに続けているか
・単に「褒められるから」ではなく、「音楽そのものへの興味」があるか
といった姿勢です。
保護者の方は、「どれだけ真剣に向き合っているか」に目を向けることから始めていただくのが良いと思います。
スランプや思春期特有の悩みなどが原因で、短期的には向き合いきれていないと感じることもあるかもしれません。
判断に悩むこともあるかと思いますが、目指していると本人が言っている限りは、その気持ちを否定せずに見守ってあげてください。
Q3.準備は早いほうがいいと聞いたけど……
もちろん、早い段階から準備を始められるなら、それに越したことはありません。
実技はもちろん、聴音やソルフェージュなども、個人差があるとはいえ、積み重ねてきた時間が実力に直結しやすい科目といえるでしょう。
早いうちから目指したい気持ちがある場合は、実技の先生に一度相談してみたり、ソルフェージュの体験レッスンに通ってみたりすると良いでしょう。
今後の対策として、あるいは習い事として続けていけそうなら、月に数回、通い始めるのも良さそうです。
逆に、もう遅すぎるのではないかと悩んでいるみなさんも、本当に目指しているのであればいつ始めても遅すぎるということはありません。安心してください。
ただやはり、合格レベルに達せるかというのは取り組んでみないとわからない部分も大きいので、信頼できる先生を見つけて、素養を見てもらうところから始める必要があるでしょう。
週に何度も課題に触れたり、クリアできそうな範囲や条件で志望校を練り直したりする必要も出てくる可能性があるので、先生とも相談しながら、自分だけの受験対策プランを立てて取り組むのが良さそうです。
Q4. 受験準備は、個人レッスンと学校の部活だけで十分ですか?
専攻実技に関しては、信頼できる先生の個人レッスンが大きな支えになります。
一方で、聴音・視唱・楽典については、専門的な指導を受けられる環境がある方が有利です。
・音大受験専門の塾・予備校
・大学の公開講座や夏季講習会
などを活用すると、効率よく準備が進みます。
9. おわりに
音大受験を正しく恐れ、合格を掴み取るために
音大受験には、学費・将来・実技のレベル・勉強との両立など、不安材料が多く見えるかもしれません。
しかし同時に、
・毎日音楽に触れられる環境
・同じように音楽を志す仲間との出会い
・自分の限界に挑戦し続け、さらに高みを目指す4年間
という、大きな価値もあります。
私自身、今後どう音楽に向き合っていくのかをさらに突き詰めていく学びが得られましたし、
何より、高校までとは違って、同じ方向を向いた同士ばかりの環境に身を置くことで、4年間かけがえのない時間を過ごすことができたと感じています。
音大受験を考え始めた今、一番大切なのは、「知らないから不安」な部分を、一つひとつ正確な情報で埋めていくことです。
そのために、私たちのような音大受験専門の塾・教室を、情報と準備の伴走者としてうまく活用していただければと思います。
当塾に限らず、みなさん一人ひとりに合わせて親身に考えてくれる先生は必ずいるはずです。
先生選びの際には、ご家族でよく話し合って、受験のパートナーとして一緒に走ってくれる、信頼できる先生を選んでくださいね。
受験生のみなさん一人ひとりの志にかなう進路選択ができるよう、
そして今後も音楽と良い関係性を築き、夢を叶えていけるように、心から応援しています。
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