こんにちは!音大受験アカデミー講師の鈴木薫です。
東京藝術大学音楽学部声楽科の受験生向けに、私の入試体験談とアドバイスを記します。年度によって仕様は異なると思いますが、皆さんの受験にあたりご参考になれば幸いです!
入試スケジュール
- 共通テスト(1月中旬)
- 実技第1回(2月下旬)
- 実技第2回(3月上旬)
- 実技第3回(3月上旬)
- 基礎能力検査(3月上旬)
東京藝術大学の個別試験は2週間程度で行われ、最終試験まで4回登校することになります。この期間張り詰めた状態な上、特にホテルに滞在して受験する方は心身に負担がかかります。私もホテルに滞在して受験し、友人と通話したり、一緒にご飯を食べたりしてメンタルを保っていました。彼らには感謝が尽きません。しっかりと心身をマネジメントしていきましょう。
科目別入試体験談&アドバイス
① 共通テスト
声楽科入試では下記科目が課されます。
・外国語
・国語
最終判定の際、足切りで使われると言われています。求められる得点率には諸説ありますが、5〜6割は取れていると安心です。
② 実技第1回
- 曲目
下記曲目を提出し、当日各区分から2曲ずつ選択
【日本語】4曲
【外国語】4曲(伊語,独語,仏語の楽曲群より選択) - 流れ
(1)集合・点呼
(2)声出し部屋
(3)待機
(4)本番
私の年は部屋が広くなく、先生たちが近い距離にいらっしゃったのでめちゃくちゃ緊張しました。声出しは複数名で1つの部屋を使うので、影響されすぎず、自分に集中して心身のコンディションを整理する時間に使いましょう。
③ 実技第2回(2月下旬)
- 曲目
自由曲1曲(4分以内) - 流れ
第1回と同様
私はドニゼッティ作曲の《Don Pasquale》より“Bella siccomo un angleo”を歌いました。自由曲の選曲は古典歌曲からロマン派・近代歌曲、オペラアリアなど様々です。合格者は冒険しすぎず、堅実な選曲をした人に多い傾向があります。先生と相談し、パフォーマンスを最も発揮できる曲を選びましょう。
④ 実技第3回
レッスン室で実施され、先生との距離がとても近かったです。圧に負けず、冷静に歌いましょう。
コールユーブンゲン
- 流れ
- 2021年度はA問題とB問題の2パターンがあり、それぞれ長調と短調の2曲歌う前に主和音と開始音を提示
- 対策
- 高2の終わりくらいからはじめ、とにかく練習しました。
- 難しい番号が出される可能性が高いので、全曲暗譜できるくらい練習しましょう。
リズム課題・新曲視唱
- 流れ
- 別室で2分予見の後、試験室に誘導新曲視唱→リズムの順で実施新曲師匠を歌う前に主和音と開始音を提示
- 対策レッスンと練習です。ソルフェージュのレッスンに毎週通い、それ以外の日は視唱の教材を使って練習しました。客観的に習熟度が判断しにくいため、レッスンでのフィードバックが欠かせませんでした。1年半ほどかけて対策しました。最初は全く歌えず心が折れそうになりますが、繰り返し練習することで着実にできるようになりました。途中で音がわからなくなってもとにかく最後まで歌い切りましょう。
- 対策に使った教材
- 「高校・大学受験のための 視唱課題集 桐朋学園音楽部門編」音楽之友社
- 「基礎 ソルフェージュ 初心者のための視唱課題集 桐朋学園音楽部門編」音楽之友社
⑤ 基礎能力検査
楽典(60分)
- 内容
基本的な内容が出されます。他の音大と比べるとオーソドックスで、マニアックというよりは王道な問題だと言えます。
- 対策
- 過去問から出題傾向を確認し、先生の力を借りながら堅実に取り組みましょう。しかし、一番よく使われている黄色い楽典の本「楽典 -理論と実習-」(音楽之友社)では藝大で出題頻度の高い終止形、七の和音、非和声音の内容がカバーできません。他の書籍やインターネット、レッスンなどでカバーしましょう。
- 多くの場合、集中して取り組めば数ヶ月で入試レベルに到達できます。レッスンを行っている体感だと約半年がボリュームゾーンかと思います。
- 対策に使用した教材
- 「新装版 楽典 理論と実習」音楽之友社
- 「音大受験生のための パーフェクト楽典・問題集 【改訂版】」ドレミ楽譜出版社
- 「楽典.com」 https://楽典.com
聴音
- 内容
単旋律(2025年度からは記憶)、二声の複旋律、四声の和音が課されます。
ピアノではなくスピーカーで流す形式で非常に聞こえにくく、特に四声はほとんど聞こえませんでした。改善されているかもしれませんが、同様の環境で練習しておくことをお勧めします。
- 対策
- 私は聴音が本当に苦手だったので高校3年生になってから毎日、各形式で1題以上の聴音を解くようにしていました。始めたての時は全くできず、毎週のレッスンが不可欠でした。繰り返し練習することで徐々に力がついていきます。
- 対策期間は長ければ長いほど良いですが、私は1年半ほど必要でした。音が聞こえないうちは本当に苦痛ですが、根気強く頑張りましょう。
- 本番はとにかく楽譜を埋めましょう。リズムだけでもわかれば音は適当でリズムだけ書くなど、何でもいいです。空欄を作らないことが重要です。
- 対策に使用した教材
- 「志望校別 聴音模擬試験 東京藝術大学編」パンセ・ア・ラ・ミュージック
- 「洗足オンラインスクール」https://senzoku-online.jp/DICT/
副科ピアノ
〈内容〉
スケール(調性は当日指定)と課題曲(ソナチネ,ソナタ)から1曲を演奏します。ゆっくりでいいのでとにかく丁寧に弾きましょう。ピアノに触れてこなかった層からすると藝大でピアノを弾くこと自体に大きな不安があると思いますが、本当にそこまで高いレベルは要求されていません。先生の言うことを聞き、丁寧に弾くことを重視しましょう。
〈対策〉
ピアノも他の試験同様、根気がものを言うと思います。私も最初はスケール全調なんて弾ける気がしませんでしたが、毎日繰り返し練習するうちに弾けるようになりました。諦めず、根気強く頑張りましょう。私は小学校1〜3年生の時にピアノを習っており、受験のために高校2年生の1学期から再開しました。とにかく始める時期は早い方が良いので、「音大を受験したいけどまだピアノを始めてない!」という人は今すぐ始めましょう。
声楽以外の受験対策について
ソルフェージュや副科ピアノ、楽典など、藝大受験には必要な対策がたくさんあります。私自身、本格的に対策を始めたのは高校2年生からで受験に間に合わせるために苦労した記憶があります。
受験期に焦らないためにも、藝大をはじめ音大受験を考えている人はできるだけ早期に、今日からでも対策を始めましょう。早ければ早いほど良いです。ただ、どの段階から対策を始めてもやり方次第では合格が狙えます。どのような環境にあっても決して諦めず、今の自分にできる最善の行動をしましょう。
最後に
藝大受験に最も大切なものは何でしょうか?実技の上手さやソルフェージュ、共通テスト対策はもちろんですが、私は「メンタル」だと思います。受験は心に大きな負荷がかかります。受験対策を頑張るのはもちろんですが、心身を壊しては歌えるものも歌えません。努力している自分を認めながら心身を上手にマネジメントしてください。
また、藝大に固執しすぎるのも良くありません。日本には素晴らしい音楽大学がいくつもあり、どの大学にも偉大な先生や優秀な学生がたくさんいらっしゃいます。「どの大学か」ではなく、「どの先生に習いたいか」「自分の目標は何か」を軸に進路を考えることをお勧めします。私は結局藝大に進学しましたが、高1の冬から国立音楽大学の夏期・冬期講習会にほぼ毎回参加し、ソルフェージュや楽典の講義を受講して受験対策をしていました。また、ここでのレッスンをきっかけに声楽の学習方針を大きく転換することになり、この講習会は藝大合格に不可欠な機会となりました。ぜひ他の大学も視野に入れ、自分の軸に沿った進路選択をしてください。
広い視野を持ち、目標に向かって貪欲に、ストイックに頑張ってください。
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