こんにちは!音大受験アカデミー講師の渡邉雄一です。今回は、国立音楽大学音楽デザイン専修について、普段の授業や学校生活などを在校生の視点から解説します!
音楽デザイン専修の概要
音楽デザイン専修は、演奏・創作学科の中に位置する専修のひとつで、1学年およそ10名弱ほどの学生が在籍しています。
1991年に「音楽デザイン学科」として誕生したのが始まりです。一時は「コンピュータ音楽専修」に名称が変更されましたが、2026年から「音楽デザイン専修」に名称を変更し、原点回帰を果たしました。
1学年10名弱という超少人数だからこそ、一人ひとりの創作に対して手厚い指導を受けられるのが大きな魅力です。
ここで一つ、知っておくべき注意点があります。「ポップスのDTM制作や商業音楽の打ち込みをガッツリ学びたい!」という目的だけで選ぶと、イメージとのギャップを感じるかもしれません。
実は一般的なDTMの授業自体はそれほど多くなく、むしろ「音響学」「現代音楽・電子音楽の理論」「プログラミングやメディアアート」といった、音楽を理論や技術の根底からデザイン・探求する授業が中心となります。「既存のポップスを作る」というよりは、「音そのものを科学・デザインして新しい表現を作る」という意識を持った人に向いている専修と言えます。
カリキュラムについて
「音大の音楽デザイン」と聞くと、ひたすらパソコンでDTMの打ち込みをするイメージを持つかもしれませんが、実際のカリキュラムはもっと学問的で、楽譜を書く古典的な作曲理論から、最新のプログラミング・音響工学まで、段階を追って「音をデザインする力」を身につけていきます。
1・2年次では、パソコンに向かうだけでなく、音大生としての基礎的な音楽素養とテクノロジーの土台を固めます。授業は以下のとおりです。
必修授業
・西洋音楽史概説
・音楽概論
・外国語コミュニケーション
・ハーモニー
・ソルフェージュ
・器楽表現(創作系ピアノ)
・コンピュータ音楽創作
・音響演習
・分析・作曲演習
・音楽プログラミング
選択授業(音楽デザイン系から抜粋)
・DTM表現基礎/応用/ポピュラー音楽表現
・オーディオビジュアル表現
・グラフィックデザイン
・電子音楽の歴史
・コンピュータ音楽の歴史
・楽器・音響講義
1・2年次で音楽の基礎理論とテクノロジーの土台を固めた後、3年生からは「ゼミ」をベースとした学びへと移行します。「音楽デザインゼミ」を履修しながら、自分の探求したい分野の選択授業(コース授業)をピックアップして受講していくスタンスです。
楽典やソルフェージュの対策はどれくらい必要か?
楽典は「基礎を知っておけば安心」レベルで大丈夫です。ソルフェージュはできなくても全く問題ありません。
「音大」と聞くと、楽典やソルフェージュができないと授業についていけないのでは…と不安になるかもしれません。しかし、実際のところは以下の通りです。
- 楽典
入試でも使用しますし、入学後の授業(ハーモニーや分析など)でも扱うため、ある程度の基礎知識(音程や音階)を知っておくと安心です。ただし、専門的にマスターするレベルまで追い込む必要はありません。 - ソルフェージュ・ハーモニー (和声)
入試段階でできなくても全く問題ありません。
というのも、1・2年次の必修である「ソルフェージュ」や「ハーモニー」などの授業はレベル別にクラスが分かれており、未経験・初心者向けの「初級クラス」もしっかり用意されているからです。
一般的な音大(演奏系専攻)のように「幼少期からピアノやソルフェージュを叩き込まれていないと厳しい」ということは全くありません。僕自身、全く楽器経験も知識もほぼゼロですが、「授業についていけない!」ということはないです。
レベル別の手厚いサポートがあるからこそ、「楽譜を読むのは少し苦手だけど、音響やプログラミングを使って新しい表現を作りたい!」「アイデアとセンスで勝負したい!」という情熱を持った人でも、安心して飛び込める環境が整っています。
音楽デザイン専修に向いている人の特徴
音楽デザイン専修に向いているのは、自発的に「ものづくり」ができ、強い探求心を持っている人です。音楽デザインの世界では、単に「授業に出て課題をこなすだけ」の受け身な姿勢だと、4年間を終えた時に手元に何も残りません。ものづくりのスキルや表現力は、とにかく自分の手で数を多く作り、試行錯誤を重ねて初めて成長するものだからです。
①課題の「先」を自分から作れるか
授業で教わったプログラミングや音響技術を「ただ課題として提出して終わり」にするのではなく、「これを使ってこんな音を作ったら面白そう」「映像と組み合わせてみよう」と自発的に実験できる人が圧倒的に伸びます。
②知的好奇心・探求心があるか
「音」という目に見えない要素を理論やテクノロジーでデザインするため、「もっと面白い表現はないか」「このシステムの仕組みはどうなっているのか」を面白がることができる探求心が不可欠です。
「ただ授業を受ける場所」ではなく、「自分のアイデアや表現を膨らませるための実験場」として大学や設備を使い倒せる情熱を持った人に、これ以上ない最高の環境と言えます。
音楽デザイン専修の学生は、「みんなで同じ方向を目指して同じ課題をやる」というよりは、各自が自分のやりたいことや興味のある分野を持って、それぞれ個別に自由に動いている雰囲気があります。
必要なPC環境と初期費用のリアル
これから音楽デザイン専修に入学する人に、絶対に知っておいてほしい「パソコン選び」と「ソフト代」についての決定的なアドバイスがあります。
結論から言うと、「MacBook Pro」と「必要な制作ソフト(MaxやDAW)」を自分で買い揃えて入学することを強くおすすめします!たとえスペックが良くても、Windowsはおすすめしません。
① なぜ自分のMacBook Proとソフトが必要なのか?
「学校に機材があるなら自分では買わなくていいのでは?」と思うかもしれません。確かに音楽デザイン研究室にはソフトがインストールされたiMacが用意されていますが、それだけに頼るのには無理があります。
【家で課題や作品制作ができない】
音楽デザイン専修の課題や卒業制作は、一朝一夕で終わるものではありません。学校のiMacだけでは「大学が開いている時間帯しか作業できない」という事態になり、非常に不便です。自分のMacBook Proを持ち歩き、自宅でも制作できる環境を作るのが必須と言えます。
【ソフト(MaxやDAW)は自費で購入する必要がある】
ここが最大の落とし穴ですが、Cycling ’74社の「Max(Max/MSP)」やメインで使う作曲ソフト(DAW)は学費に含まれておらず、自分で購入する必要があります。(※アカデミック割引(学割)が適用できるソフトも多いので、購入時は学割を利用しましょう)。
② なぜWindowsは絶対におすすめしないのか?
PCを購入する際、「自作PCやWindowsのゲーミングPCの方がハイスペックでコスパが良いのでは?」と考える人もいるかもしれませんが、Windowsはおすすめしません。
【WindowsだとMax/MSPの動作が不安定になる】
授業のメインツールであるMax(Max/MSP)は、Windows環境だと動作が不安定になりやすいという致命的な問題があります。制作中やライブパフォーマンスの最中にソフトが落ちたり挙動不審になったりするリスクが高いため、安定して動くMac環境が必須です。
【授業も教員も周囲の学生も「全員Mac」前提】
授業の解説、画面操作、ショートカットキーの説明などは基本的にすべてMacを前提に進められます。Windowsを使っていると「自分だけ画面やメニューの位置が違う」「手順通りやっても動かない」といったトラブルが多発します。グループワークや作品の受け渡し、課題提出の際、フォントの文字化けやフォーマットの不具合など無用なストレスを抱えることになります。
③なぜMacBook Airではなく「Pro」が良いのか?
Macを選ぶ際にも、できればAirではなくMacBook Proを選ぶことを強く推奨します。Maxを使って「Max/Jitterによるリアルタイム映像・3D処理」や「DAWとの同時起動によるライブパフォーマンス」などを行う場合、ファンレスのAirだとスペック不足や熱による速度低下(サーマルスロットリング)を起こす危険があるためです。また、外部モニターやオーディオインターフェースを多数繋ぐ現場での拡張性(HDMI端子やThunderboltポートの多さ)の面でもProが圧倒的に有利です。
国立音楽大学 音楽デザイン専修を目指すあなたへ
「音楽知識ゼロから音とテクノロジーの世界に飛び込んでみたい人」はもちろん、「今までやってきた音楽経験をベースに、もっと新しい表現や試みをしてみたい!」という情熱を持った人にとっても、ここにはこれ以上ない刺激的で自由な実験場が広がっています。僕自身、大学で色んなバックグラウンドや面白い感性を持った人たちに出会いたいし、一緒にお互いの感性を刺激し合える仲間を心からお待ちしています!
ぜひ音とテクノロジーの未来をデザインする一歩を踏み出してみてください!
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