こんにちは♪音大受験アカデミー代表の矢野葵です。
今日は、音大受験の塾がちょっと書きにくいテーマについてお話ししたいと思います。
「DTMを本格的にやりたいので、音大に行きたいです」
このご相談、本当によくいただきます。そして私は、必ずしも「では受験対策を始めましょう!」とはお答えしていません。順番が逆になっていることが、けっこうあるからです。
この記事では、音大受験をおすすめするケースと、おすすめしないケースを、できるだけ正直に書きます。進路を決める前の判断材料にしていただければ嬉しいです。
まず結論:DTMをやりたいだけなら、音大進学は必須ではありません
先に前提を共有しておきますね。
音楽を「作る側」の世界は、演奏の世界と比べて学歴の比重が小さい分野です。作編曲家、劇伴作家(映像音楽をつくる人)、ゲーム音楽のクリエイター、トラックメイカー。こうした職種で活躍している方の中には、音大出身ではない人も多いです。
これは演奏の世界とはかなり事情が違います。演奏家の道は、幼少期からの積み上げとそれを支える環境が前提になる場面が多いですよね。でも作る側は、「何を作ったか」が問われる比重が大きいのです。
ですから、「DTMをやりたい」という動機だけなら、音大受験は必要条件ではありません。
そしてもうひとつ大事なこと。音大受験の対策には、それなりに時間がかかります。 クラシック作曲系の入試では、和声・楽典・ソルフェージュといった音楽理論の基礎が問われるのが一般的で、これはパソコンで曲が作れることとはまったく別の力です。ゼロから始めるなら、年単位の準備を見ておく必要があります。近年では実技試験がなく、短期間の対策で入れるところも増えてきましたが、そう言ったところは逆に面接での受け答えや受験生自身のキャラクター、これまでの経歴、言語化能力などが厳しくみられます。
その時間を受験対策に使うのか、作品を作ることに使うのか。ここは真剣に比べてみる価値のある分かれ道だと思っています。
それでも音大に行く意味があるケース
では音大は要らないのかというと、もちろんそんなことはありません。私が「受験対策を始めましょう!」とお答えするのは、だいたい次のようなケースです。
① 環境そのものが必要な場合
スタジオ、録音設備、大型の制作環境。そして何より、同じことをやっている人が周りにいる状況です。これは個人ではなかなか用意できません。
特にアンサンブルや生楽器の録音を伴う音楽をやりたい場合、大学の環境は代わりが効きにくいですね。
② まとまった時間がほしい場合
音楽制作に4年間を集中して使える環境は、社会に出てからはまず作れません。「時間を買う」という意味での進学には、はっきりした合理性があります。
③ 教える側・研究する側を視野に入れている場合
音楽教育や研究の道に進む可能性があるなら、学歴が前提になる場面が出てきます。音楽大学では、「大学」らしい、学問としての学びが得られます。
近年は、DTM・音響・音楽環境・音楽デザインといった制作寄りのコース(当塾では「新専攻」と呼んでいます)を設ける音楽大学がどんどん増えています。しかも新専攻は専攻実技試験がなく、面接重視という特徴があるので、「音大はハードルが高い」と思っている人にこそ知ってほしい選択肢です。
どの大学にどんなコースがあるかは、別の記事に詳しくまとめています。
逆に、受験をおすすめしないケース
さて、ここからがこの記事で一番お伝えしたいところです。
次のような場合、私は「受験より先にやることがありますよ」とお話ししています。
まだ、一曲も作ったことがない
これが、実はいちばん多いです。
「DTMをやりたい」と思っているけれど、実際にはまだ何も作っていない。この段階で受験を決めるのは、食べたことのない料理を専門に修行すると決めるようなものかなと思います。
音楽を聴くのが好きなことと、作るのが好きなことは、残念ながら別の能力なんですね。そして、作ってみて初めて分かります。
理論の勉強に、今はまったく興味が持てない
楽典やソルフェージュは、受験を突破するためだけの科目ではなく、その後もずっと使う土台です。
ただし、作りたいものが具体的にない状態でこれを始めると、ほぼ確実に苦行になります。 順番としては、まず何か作ってみて「こういう音を出したいのに出せない!」という壁にぶつかってからの方が、吸収が圧倒的に速いです。
作ることと学ぶことは、対立しません。むしろ相乗効果が出ます。
「音楽で食べていく」ことを目的にしていない
これは全然悪いことではありません。音楽を仕事にしなくても、音楽を作り続けている人は大勢います。むしろ、仕事にしないと決めているからこそ自由に作れるという面もありますよね。
その場合、音大受験は目的に対して少し大きすぎる投資になるかもしれません。
中学生で、進路をまだ絞りたくない
中学生、または高校1年生くらいの段階で音楽系に絞り込む必要は、多くの場合ありません。高校に入ってから判断しても十分間に合います。
それまでは、選択肢を狭めずに、実際に手を動かしてみる期間と考えていただければと思います。
受験しないなら、何をすればいいの?
「音大には行かないかもしれない」となったとき、では何もしなくていいのかというと、まったく逆です。やることははっきりしています。
作品を作って、残すこと。 これに尽きます。
作る側の世界で問われるのが「何を作ったか」である以上、作品の蓄積がそのまま実力の証明になります。そして作品は、後からまとめて作れるものではありません。中学生のときに作った拙い曲も、3年分並べば立派な成長の記録です。
もうひとつ、あえて書いておきたいことがあります。独学には、決まった落とし穴があるんです。
YouTubeに解説動画はたくさんありますが、順序立てて並んでいるわけではありませんよね。多くの子が、最初のソフトの設定や「音が出ない」問題でつまずいて、そこで止まってしまいます。「興味はあるみたいなのに、全然進んでいないんです」という保護者の方からのご相談は、ほぼこのパターンです。
熱量があるうちに、最初の一曲を最後まで作りきれるかどうか。ここが大きな分かれ目になります。
「まず作ってみる」ための場所をつくりました
この「最初の一曲」の部分を引き受けるために、同じ株式会社A.O.I.が、中高生向けのオンラインDTMスクール「NEON FREQ」を開校しました。
音大受験アカデミーとは、目的をはっきり分けています。NEON FREQは受験対策のスクールではありません。 趣味として音楽を作ってみたい中高生のための、完全初心者向けのレッスンです。
- パソコンとインターネット環境があれば始められます(特別な機材は必要ありません)
- 講師は現役の音大生・芸術系大学生。年齢が近いので「こういう曲が好き」という話から始められます
- ボカロ曲でもゲーム音楽でも、本人が作りたいものから入ります
- 受験の予定がなくても、まったく問題ありません
初回は無料体験として、個別相談とDTMのミニ体験をご用意しています。「うちのパソコンで足りる?」といった相談だけでも大丈夫です。気になる方はNEON FREQの公式サイトを覗いてみてくださいね♪
そして作っているうちに「やっぱり本格的に学びたい」「音大を目指したい」となったときには、音大受験アカデミーがあります。順番が逆にならないように、入口を分けているというのが私たちの考えです。
迷っている段階でも、ご相談ください
音大受験アカデミーでは、受験対策のレッスンだけでなく、「そもそも受験すべきかどうか」という段階のご相談もお受けしています。
その結果、「今は受験ではないと思います」とお伝えすることもあります。それで構いません。受験させることが目的ではないので、そこは率直にお話ししています。
音楽の進路は、学校の進路指導でカバーしきれない領域です。情報が届かないまま、選択肢を知らずに決めてしまうのが一番もったいないと思っています。学年を問わずご相談いただけますので、迷っている段階でお声がけくださいね♪
NEONFREQ 公式サイトはこちら
執筆:矢野葵(音大受験アカデミー代表)